日本語教師進路ジャーナル

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九産大造形短大が描く独自の留学生像(後編)

 九州産業大学造形短期大学部が独自色の強い留学生受け入れをしている。外部の日本語試験に頼らない選抜と最新の施設で行われる充実度の高い授業。域内唯一の芸術系私立短大が考える理想的な留学生教育とはどのようなものか。後編は好奇心がくすぐられる施設についてレポートする。

少人数で広い空間を使うため、学生は創作活動に集中できる

 造形芸術領域の融合と多様化に対応し、社会のニーズに適応できる人材を育成する――。九州産業大学造形短期大学部が描くカリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)の一文だ。科学技術が進歩し、情報化社会へと変わりゆくなか、芸術系大学もまた時代に則した人材育成が求められている。この難題に対する解として2016年度に建設したのが、あらゆる芸術分野の施設を集めた工房だった。4年制の九州産業大学芸術学部とは完全に独立した短期大学専用の施設だ。
 絵画からゲーム、マンガ、グラフィックデザイン、さらには写真、陶芸、アート書道まで、じつに10系列に及ぶ学びの本丸には質・量ともに申し分ない設備が揃う。例えば、陶芸実習室ではロクロを使って成形した作品を乾燥させ、釉薬をかけて竈で焼き上げるという全工程がこの一室でできる。短期大学で陶芸を学べるのは他に奈良芸術短期大学など少なく、2年間で技術を身に着けたい学生にとっては魅力的な工房だ。また、映像実習室・録音実習室ではアニメーションのアフレコという専門的な体験ができる。短期間でアニメーションを学びたい留学生は専門学校に進学しがちだが、オープンキャンパスで最新の設備を目の当たりにした彼らが進路を変更して九州産業大学造形短期大学部に入学するケースもあるという。

短期大学では数少ない陶芸が学べる施設。学生の笑顔が印象的だ

 芸術系大学の卒業生がその分野で職に就くのは難しい。夢に破れ、一般企業に進む者もいる。「だからこそ芸術的感性を磨き、他の分野の学生とは異なる人間像を形成してから社会に出て欲しい」。小田部黃太学長はそう語り、「留学生はせっかく海外から来たのだからなおさらだ」と強調する。
 学生数300人程度の小さな短期大学だが、バラエティに富んだ学生が集う。2017年度には落書きの3D作品で競う「レッドブル・ドゥードゥルアート」の世界チャンピオンを輩出した。日本語学校からの留学生とは別に日系ブラジル人など南米から来た学生もいる。また、学部棟や工房の外に出れば、4年制の九州産業大学の学生が右へ左へと行き交っている。ありとあらゆる人々と触れ合う日々は留学生の人間形成にも影響を与える。
「21世紀はあらゆる産業でデザインが問われる時代。社会のなかの総合的なデザイン力を高める教育をしていきたい」(小田部学長)。
 苦境の短期大学はどのように生き延び、どのように留学生を受け入れるべきか。九州産業大学造形短期大学部の独自性はその道標を示しているのかもしれない。
(この項、了)

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